ワザリング・ハイツ ~本館~

Something childish, but very natural.

エッセイ

ル・クレジオ『物質的恍惚』を読む

アンリ・ミショーで卒論を書いた、というところからすでに私の心を摑んではなさなかった作家である。おそるおそる手にとった作品が『物質的恍惚』で本当によかったと今でも思う。英語で書いたものが出版に至らなかったことから、フランス語で小説を書き、華…

イルマ・ラクーザ『ラングザマー』を読む

ゆっくりと生きるための本であり、ゆっくりと生きる場面に本と文学の風景を見た、ラクーザの洞察が光る名著である。本のための本と言えば思いつくのは、『ヘッセの読書術』であったり、『時間のかかる読書』、『冬の夜ひとりの旅人が』、松岡正剛の著作くら…

アルベール・カミュ『シーシュポスの神話』を読む

哲学を学ぶにはどうしたらよいかを考え、結局それらしい手掛かりを摑みはじめたのは『シーシュポスの神話』を読み終えてから8年以上経った20代の終わり頃であった。そこで木村敏の精神病理学に出逢い、西田幾多郎の哲学を敷衍した現存在分析を学び、それを物…

ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』を読む

『わたしのいるところ』は日本語で読み、その後In Other Wordsを英語で読んだ。とても平易な英語で書く作家だとわかり、『わたしのいるところ』のような作品であれば、その効果はこんなふうにうまくあらわれるのか、と興味深く感じた。静かな孤独を描きだし…

フェルナンド・ペソア『不穏の書』を読む

この次に、プラタ街から、ドウラドーレス街から、ファンケイロス街から消えてなくなるのは、この私だろう。明日、この私が。――感じ、考えているこの魂が。自分にとってこの宇宙すべてであるこの私が。――そうだ、明日これらの街並を通りすぎるのを止めるのは…