ワザリング・ハイツ ~本館~

Something childish, but very natural.

フランス文学

ル・クレジオ『物質的恍惚』を読む

アンリ・ミショーで卒論を書いた、というところからすでに私の心を摑んではなさなかった作家である。おそるおそる手にとった作品が『物質的恍惚』で本当によかったと今でも思う。英語で書いたものが出版に至らなかったことから、フランス語で小説を書き、華…

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』を読む

池澤夏樹が編んだ世界文学全集にも収録されている一冊。英訳で読んで以来、実に八年前ぶりの再読。以前はこれをどう扱ったらいいのかがよくわからなかったが、このたび丁寧に読みなおしてみると、なるほど、これはすごい小説である。しかしクンデラの出して…

アルベール・カミュ『異邦人』を読む

「異邦人」と打って最初に出てくる予測変換(google)は「カミュ」ではなく「歌詞」である。言うまでもなく久保田早紀の名曲「異邦人」である。歌詞には「あなたにとって私/ただの通りすがり/ちょっとふり向いてみただけの/異邦人」とある。「異邦人」に…

アルベール・カミュ『シーシュポスの神話』を読む

哲学を学ぶにはどうしたらよいかを考え、結局それらしい手掛かりを摑みはじめたのは『シーシュポスの神話』を読み終えてから8年以上経った20代の終わり頃であった。そこで木村敏の精神病理学に出逢い、西田幾多郎の哲学を敷衍した現存在分析を学び、それを物…

シュペルヴィエル『海に住む少女』を読む

フランスの映画監督ジャン・リュック・ゴダールは、南アメリカの幻想的な印象をもたらす作品として、シュペルヴィエルの作品はとりわけ重要であると述べたらしい。日本で文庫本が二冊手に入るにもかかわらず、日本語でも英語でも情報はとても少なく、非常に…

アルベール・カミュ『ペスト』を読む

現在の世の中を見てカミュの『ペスト』が思いだされたと実に多くのひとが語る。たしかに原因不明のコロナウイルスが次々と無差別に人間をとらえ、身体や心、思考、生活を喰いあらしてしまうさまは『ペスト』に描かれた通りであり、また医療関係者の心のうち…